「桜華はずっと桜華だよ。変わってなんかいない。ずっと」
じわ、と目元が熱くなる、気がした。
つん、と鼻の奥が痛くなり、あわててうつむく。
──どうして。
なんでそんなに、優しい言葉をくれるの。
なんでそんな簡単に、欲しい言葉をくれるの。
「昔の桜華のが好きって言ったけどさ」
泣いている私に気付いたのだろう。
決して彼の手は私の涙を拭ってくれないけど、流風は私から目をそらし、窓の外を見た。
こういう分かりにくい優しさに、私は恋に落ちたんだっけ。
「それは俺が、桜華と距離が遠くなった気がして、嫌だったから。嘘をつかれんのも、俺には本当のこと言えよって思うから嫌なだけで」
どきん、と胸が鳴る。
──それは、どういう意味なのだろうか。
俺には本当のこと言えよ、なんて、まるで漫画の中の王子様のようなセリフだ。
流風はきっと、何の他意もないのに。
ただ本当に、私が友達として大切だから、そう言ってくれるだけなのに。
勘違い、してしまいそうだ。
違うのに。流風にそんなつもりは、ないだろうに。
「俺がちゃんと言えって言ったら、自分の気持ち言ってくれたじゃん」
そう言った流風が、寂しげな微笑をこぼす。
「ずっと俺は───だったから」
彼が小さく、何かを言った。
「…え、何?」
吐息に混じって、ところどころしか聞きとれなかったため聞き返すと、流風は窓の外を見たまま首を振る。
「何でもない」