「でも私は、自分が変わっていくのは何とも思わなくなっていたのに、この村が変わってしまったのは、嫌だった」
綺麗に舗装された道路。
駅前に建てられたコンビニ。
オシャレな喫茶店。
どれも東京では当たり前にあって、見慣れていたはずのもの。
なのに寂しいと感じてしまったのは、きっと。
──変わらないと、思っていたから。
だから彼が変わっていなくて、嬉しかった。
変わらないと思っていたものが変わってしまうのは、悲しくて、寂しいことだ。
「流風もきっと、嫌だったよね」
私が変わってしまったことが。
自分では仕方ないと思っていたけれど、流風にとっては違う。
仕方なくなんか、ない。
流風が床から立ち上がる。
私より10センチほど高い身長を少しだけかがませることで、目線が合った。
「……そりゃまあ、寂しかったけど」
主語がないから定かではないが、私が変わってしまったことについてだろう。
そうやっていつも、自分の思ったことを素直に言ってくる彼。
昔と少しも変わらない、そのまっすぐな視線が苦しくて、思わず目をそらす。
変わってしまった自分が、情けない。
……こんな自分、嫌いだ。
見た目ばかり気にして、自分の気持ちを素直に言えない自分が。
あの頃のような純粋さも、少しも残っていない自分が。
──流風が笑う気配がした。
空気が、ふんわりと優しくなる。


