「…ほーんと、変わんないね」
主語がなかったからか、流風がなんのこと?と首を傾げる。
「そうやって、すぐ顔に出るところ」
今もきょとんとした表情の流風が、それ褒めてんの、とふくれっ面をした。
もう彼は成人しているはずなのに、どこか子供らしさを残している。
きっとその原因には少なからず、コロコロ変わる表情にあるのだろう。
「褒めてるよー」
私はそんな風に出来ないから。
いつからか、素直に自分の気持ちを出せなくなっていた。
周りの顔色をうかがって、言いたいことも言えなくなったのは、いつだっただろうか。
流風は納得のいかない顔をしているけど、実際本当に羨ましいのだ。
「流風はさ、私のこと”変わった”って言ったじゃん」
アルバムを閉じ、立ち上がる。
これ以上昔のキラキラした自分を見ていると、今の自分が惨めに思えてくるから。
流風が床に座ったまま、私を見上げた。
「自分でも、変わったなーって思う。東京行って、世の中綺麗事だけじゃ通らないって知って」
変わってしまったのは仕方がないことだと、周りのせいだと、言い訳をこぼす。
こうやって、逃げるようになってしまったのはいつからだろう。
仕方ないと決めつけて、変わってしまったても、何とも思わなくなっていた。
まっすぐな瞳で流風が見つめてくる。
──ずっと、変わらないのに。
あの頃の瞳のまま、まっすぐに見つめてくる彼は、ずっと変わらないのに。


