移ろいゆくもの、変わらないもの

                         



アパートに戻ると、引っ越しの荷物はもう届いていた。

ついでに、引っ越しの業者さんが気難しそうなおじさんで、家にいなかったことについて、遠回しに嫌みを言われた。

私が半泣きでそれを聞いているあいだ中、流風はずっと笑いをこらえたような顔をしていたのに、なぜかおじさんは流風のことは気にも止めず、私は何度も心の中で、「理不尽だ」と悪態をついていた。

で、そんなことがあったら、引っ越し業者のおじさんとは何だか気まずくなってしまったため、荷物を部屋に入れてもらったあとは、さっさと帰ってもらった。



というわけで今、狭いアパートの部屋に、流風と二人きり。
異性と二人きり、なんだけど、相手が流風じゃ、甘い雰囲気になるわけもない。


私は「大事なもの」と書かれた付箋の貼ってある段ボールを開けた。
中から出てきたのは、友達と撮ったプリクラや、季節限定パッケージ、と書かれたハンドクリームや、透けた桃色のケースに入ったヘアピン。

本当に大事なものなのか疑いたくなるようなものばかり出てきたけど、下の方に入っていたものを見て、「大事なもの」という付箋が貼ってあったことに納得する。

たぶん、上の方にあったやつは、どこに入れようか迷って、適当に入れたものなんだろう。


友達からもらった誕生日プレゼントや、お気に入りのアイドルグループのCDを出していくと、一番下に入っていたものが、あらわになった。

淡い桃色の本だ。

触れると、ざらりとした質感が、手のひらをくすぐる。

懐かしさを感じ、口元が緩んだ。


両手で慎重に取り出すと、それほど重くない、でも思い出がたくさん詰まった、温かい重さが伝わってくる。


──開くのは、7年ぶりだ。

確か、もらってすぐに机の引き出しに閉まってしまった覚えがある。