彼女はもう一度、俺の事を
強く睨み、でもそれ以上は
何も言わずに自転車を直し始めた。

無性にイライラした。
見ず知らずの俺に向かって
あんな言い方をする
彼女に腹が立った。

俺が帰るべき無駄に高い
マンションの隣を通り過ぎ
その先にある一軒家に自転車を止める。

ーピンポン

楓「どうしたの?奏。」

奏「久しぶりにどこかへ
出掛けないかな?と思ってさ。」

楓「いいよ。すぐ支度するから
中で待ってて。」

だけど楓に会ってみても街へ出掛けてみても
俺のこのイライラが収まることはなかった。