「ただいまぁ~」「お邪魔します。」

遅くなったことに後ろめたさを感じて…

少し小さめの声で挨拶しながら、玄関のドアを開けると

「貴様!!」

お父さんの怒鳴り声が聞こえた。

…………?!…………!!!

二人で顔を見合わせて、慌てて入って行くと

リビングでは…真っ赤な顔で怒鳴ってるお父さんと

隣でオロオロしているお母さん。

向かいには、不貞腐れてソッポを向いてる尋ちゃんと

「すみません」と土下座をしてる和也さんの姿が目に入った。

………多分、高校生の時から付き合ってたことかなぁ?

それも…担任の先生だから……

「お邪魔します。」

先生の声に「あぁ~。いらっしゃい」と

少し冷静になるお父さん。

「お姉ちゃん聞いて!!
和君が挨拶したら…いきなり怒鳴りつけたんだよ!」

興奮気味の尋ちゃんを見てたら

何だか可笑しくなってきて…………

うふふ………あはっ………あははは………

思わず笑ってしまったの。

急に笑い出す唯にみんな呆然。

先生が頭を撫でてくれて……

お母さんがガーゼのハンカチを渡してくれた。

あっ……………泣いてるんだ………。

ポロポロ落ちる涙を……

誰一人声もかけずに眺めてて……

先生の手だけが……ポンポンと音をたててる。