「先生……。」

「なに?」

家まで後少しのところで、車を止めてくれる。

「あの……」

なんて伝えたらいいのか分からず……

シートベルトを外して、先生の肩に頭を預けた。

「うわぁ!!」

一瞬びっくりしたみたいだけど、直ぐにいつもの先生に戻って

後ろから手をまわして、そっと頭を撫でてくれる。

「今はこれで十分。
だから、こうやってギュッてするのは許してね。
オレは唯ちゃんの彼氏だけど、兄ちゃんとか父さんの役目もしてるのかもなぁ~。時々無性に愛しくなって、甘やかせたくなるもんなぁ。
それに、こうやってヨシヨシってしてると下心なく幸せだなぁって思うし。
もしかして…唯ちゃんより愛里ちゃんの方が女を感じるのかな?
唯ちゃんといたら時々我が子を育ててる気になるし………」

「ええっ!!」

唇を尖らせて抗議する唯に

「拗ねるくらいなら、もうちょっとスピードアップして育ってね。」

からかいながらもう少し先生の方に引き寄せた。

先生に体重を預けたら、もう少し強く抱きしめられた。

う~ん、幸せ。

あれっ?先生、汗の匂いがしない。

それに…良い香り。

……もしかして…シャワー済ませた?

……………………………………。

キャー!!

唯って仕事帰りで汗臭いのに⁉

恥ずかし~。

逃げようとしたら、ギュッとされて

「何?」って睨まれた。

「あっ…あのね。仕事帰りで汗臭いから………」

「な~んだ!」って笑って

……………髪にフワッと何かが触れた。

わぁっ!!キス。

髪にキスした………………………。

ボンって音がしそうなくらい、赤くなった顔を押さえたら

また、さっきみたいに頭を撫でられて

「さぁ~帰ろうかぁ~」って

何事もなかったように、話しかけられ

おもちゃみたいに、ただただ首を振る唯を笑って

「おやすみ」って、帰って行った。

…………………………………………。

あぁ~びっくりしたぁ~。

キスは待つって言ってたよね??

髪は良いの??

唇のキスじゃないから??

娘にするようなキスだよね?

親愛のキスだよね??

うん、そう!!……下心なんてなかったもん。

ドキドキする胸を静めるために

自分への言い訳をいっぱいした。

もう少しで夏休み。

今年は彼氏としての先生と、いっぱい過ごせる。

楽しみもいっぱいだけど……ちょっと不安になっちゃった。

"待つよ"って言ってくれたんだもん。

…………………大丈夫だよね?…………。