お父さんのことなんて…頭からキレイになくなったみたいに

先生のことしか…考えられなくなった………。

…………………………。

結婚…………。

先生と一緒に生活する………。

きっと

今日みたいな楽しい時間が、沢山になるんだろうなぁ~。

先生と居たら……淋しさも不安もなくなって…

幸せになれるって…分かってる。

唯にとって……一番良いことかも知れないなぁ~。

……………でも…先生は?

それで良いの?

唯は先生に守られて、安心して幸せでいられるけど…

先生にしてあげられる自信はない……。

今の唯だと…頼っても…支えるなんて…無理だもん。

……家族って…

誰か一人が頑張っても……上手くいかない。

皆が少しずつ支え、寄り添わないと……。

先生と家庭を作るなら……壊したくない。

先生のいない時間がくるのは……怖いもん。

大切だから……離れていかないか不安。

甘えたい自分と…ダメだとセーブする自分が…

心と頭の中で…追いかけっこしてる。

「あぁ~。緊張する~!
オレの心臓の音……聞こえる?」

うん、聞こえるよ……。

「先生、ありがとう。
……あのね、先生の言葉………ホントに嬉しいです。
先生のことは…大好きだし……
唯も…いつか先生と結婚できたらなぁ~って…思ってたの。
でも…ね。
いざ結婚って言われると…正直……戸惑ってて。
唯は…恋愛も上手く出来なくて、この間恋を知って……
だから…どう答えていいか……………。
ずっと先生といたいし…結婚もしたいけど……
今って言われると……あの……」

「うん、分かってる。
今すぐ答えを貰おうとは、思ってないから大丈夫。
オレだって…今日プロポーズするつもりなんて、なかったしね。
ただ、一人ぼっちになるって…不安は持って欲しくなかったから。
いつか結婚したいって思った時に、返事をくれたらいいよ。
何年かかっても…いいからねっ。」

えっ?そんなワガママが許されるの?!

真剣に話してくれた先生に…

こんな中途半端な返事しかしてない………。

先生の優しさに甘えてばかりで…心苦しい。

「ねぇ~唯ちゃん。一つ、お願いなんだけど…
これからは…結婚前提のお付き合いをしてくれる?」

けっこんぜんてい…………?

大人の人のお付き合いで聞く言葉だけど…………

何だっけ??

婚約??とも違うし…………

………う~ん…………。

分からないけど…聞ける雰囲気でもないから…………

「はい。」って…答えちゃった。

ふぅ~っ。

大きな息を吐いた先生は…

「大事にするね。」って…

もう一度ギュッと抱きしめて、立ち上がらせてくれた。

帰り道は…

ここに来た時の不安や絶望感は、薄らいでいて

先生の温かさだけが、心に広がった。

………先生……ありがとう。