「…り、みどり、…きて…」


ん、これは茉希の声…?

もうちょっと寝させてよ…。


「…どり、碧、起きて…起きてってば!!」

「んああああっ!!」

「やっと起きたね…。」


ちょっと茉希、爆音で起こさないでよ。

さすが総勢30名のうちの部をまとめる部長だけあって、迫力と勢いが凄い。


「春だもん。暖かいんだもん。」

「あんたさぁ、私が居なかったら五時間目に遅刻だからね?!!」


説教始まっちゃった…。


「うん。ほんとに感謝してるありがと(棒)」

「…んもう、世話やかせるんだから…」


そういいつつも、高1から私と一緒にいる茉希。

きっとツンデレなんだと思う。


「ほれほれ、五時間目まであと20分だから、急いで!!」


普通に考えたら『まだ20分』だけど、うちの学校はそうはいかない。

全校生徒が1000人以上いるうちの高校は、人数に伴って校舎もばか広くなる。

移動教室も一苦労なのだ。


「あれ、五時間目の教科なんだったっけ?」


新年度が始まって、まだ2日しか経っていないのだ。時間割など、頭に入ってない。


「びーじゅーつ!!」

「あ、そなんだ。美術って今年度最初だよね?」

「そそ。言ってなかったけどね、新しい美術の先生入るらしいよ。」

「え?!まじで?!!」

「うちらの学年の美術の先生二人になるってこと。」


美術部の私にとっては結構大きいニュースだ。


「てゆか茉希さ、そんな情報どこから仕入れてくんの?」

「…これでも美術部部長なんだけどな。」

「…私副部長なんだけどな。」


そんな私の嘆きを無視して茉希は続ける。


「大学卒業しかばっかりの男の先生だって。」

「へぇー。」


珍し。

美術はおじいちゃん先生はいるけど、若い男の先生はいないから。


…なんか想像つくな、なよなよしてて、自己主張なくて、絵にしか興味ない的な。


「碧ー!!遅れるってばー!!」

「ごめんごめん待ってー!!」


そう言って私達は、一番端にある第1校舎の5階廊下の突き当たりまで全力疾走した。