スプレーで彩られた校門。

ガヤガヤと賑わう校舎。

「ふぁ…っ、あーねむ…。」

多種多様な生徒が己のしたいように生きる、とても学舎とは言えない学校。

放任状態の教室。

昔からの生徒のやんちゃ具合に呆れているのか恐れているのか、誰が何をしても教師が止める事は無かった。

「なあ…。」

おかげで無法地帯となったこの東校は、強いものが頭。なんてだっさいものを掲げて、周りからも怖がられる喧嘩有名校となったのだ。

「…。」

そして、そんな場所へ2年という中途半端な時期に好き好んで転入してくる奴なんて、ただのバカしかいない。

「いや、待て。それだと俺がバカみたいじゃねーか。」

「なに1人でぶつくさ話してんの、気持ち悪い。」

「あれ、いつから。」

「最初から居た。ずっと声かけてたし。お前…気付いてなかったの。」

パイプ椅子に座り、ぼうっとしていた所を蹴り落とされる。痛みと衝撃で意識が現実へと戻されるなか、目の前に立つ男は煙をふかしながら、無様に転げた俺を見下した。

「俺が格好良くプロローグを語ってた所なんだから邪魔すんな。…っててて、しかもマジで蹴りやがって…。」

「…メタい。」

「プロローグだから何でも有りだろ。」

「バカ。」

強打した所をさすりながら体を起こせば、差し出される手。

素直にそれを掴み、勢い良く立ち上がって目線を揃えた。

「バカやってないでしっかりしろよ。お前がうちの"トップ"なんだから。」

学ランの胸ポケットからそれを1本取り出す。
話してる途中で、奴の襟を引っ張れば意図を察したのか、口から離したそれをまた口にくわえた。
互いのを合わせすっと息を吸うと、ジリジリと音をたてて紅く色づくそれは、やがて細く緩やかに煙を上げる。

「はいはい、わーってますよ。」

口から肺へ。ゆっくりと深呼吸をするように吸い込み、

「行くぞ。」

ため息の様に弱々しく吐き出した。




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