Sweet break Ⅲ

『無意識かもしれないが、お前、俺が近づくたびに妙に身構えてるだろ』
『そ、それは…』
『いや、もしかしたら俺だけじゃなく、男に対する免疫が少なすぎて男性全般が苦手なんじゃないか?』

指摘されて、あながち外れていないかもしれないと思ってしまう。

確かに、男兄弟もいない家庭で育って、高校も女子高だったし、大学時代も、どちらかと言うと男性と交流するのが苦手で、そういった場所も好んでは行かなかった。

『…そう、かもしれない…ごめん、私が関君を傷つけてたんだね』
『いや、男慣れしすぎてるのも問題だし、そこは大した問題じゃないだろ』

『ただ…』と関君は、バツが悪そうな顔で続ける。

『俺自身が、拒否されるのが嫌なくせに、お前に近づくたびに、どうにも触れたくて仕方がなかった』
『嘘…だってそんな風には…』
『大の大人が、そんな感情抑えられないでどうすんだよ』

完璧だと思っていた関君も、自分をコントロールして制御していたなんて、想像もしていなかった。

『なのにお前ときたら、次々に煽りやがって、俺がどんだけ耐えたと思ってるんだ?』
『煽ってなんかいないよ?』
『…無自覚なのが一番タチが悪い…』

また小さな溜息を吐かれしまう。

『そもそも、今日、俺が何のためにわざわざ車にしたのか…』
『…動きが、とりやすいからでしょ?』
『表向きはそう言ったが、本当はそうじゃない…職場ならまだしも、移動の人込みや電車内でお前との距離感が取れない場所だと、自制できなくなりそうで心配だったからだ、…最も、車内もよく考えたら狭い密室で、これはこれで予想外に結構キツかったが…』

関君の赤裸々な告白に、どうしようもなく胸がきゅんと痛くなる。