Sweet break Ⅲ

言われた通り、黙ったまま助手席に乗り込むと、それを待っていたかように、関君がエンジンをかける。

『家まで送るから、道、案内しろよ』
『…近くの駅で良い』
『は?』
『ここから一番近くの駅までで良いって、言ったの』

膝の上で、ぎゅっと手を握りしめて、自分にしては強めの口調で、ハッキリと言葉に出す。

私の様子がおかしいことに気づいた関君は、一度ドライブに入れていたシフトをパーキングに入れ直し、こちらの様子を伺う。

『何だよソレ…』

明らかに憤りを含んだ、低い声音が聞こえた。

『だって、私、ただの同僚に自宅教えたくない』
『…俺は、ただの同僚か』
『そうでしょ…そもそも、私にはやっぱり無理だったのよ、関君と付き合うなんて』
『今、そういう話じゃないだろう?』
『そういう話よ!』

自分でも訳のわからない感情があふれ出し、ともすれば零れそうになる涙をこらえる。

私の勢いに押されたのか、続けようとしていた言葉を飲み込んだ様子の関君は、小さな溜息を吐くと、この空気が滞らないためか、ほんの少し窓を開け、今つけたばかりのエンジンを切った。