勇気を振り絞って、関君の右側に立ってみるも、何故か一向にその手が自分に伸びてくる気配は無さそう。

もちろん、女性から手を繋ぐことも”有り”なのかもしれないけれど、あいにく恋愛初心者には、その勇気は全く持ち合わせてはいない。

そもそも、関君の手に触れてみたい気持ちはあるけれど、触れた途端、恥ずかしさと緊張で自ら逃げ出してしまう可能性だってあるのだから…。

”でも…”

すれ違う恋人らしき二人連れを盗み見て思う。

同世代の恋人達は、ごく自然に違和感なく手を繋き、時には互いに見つめ合い談笑している。

手を繋いでいないからって、恋人じゃないということはないけれど、想い合う二人で寄り添って歩いていれば、そうなるのも”自然の理”ではないだろうか?

…ならば、どうして?

若干空しくなり、関君に気付かれないように小さな溜息を吐き、頭上を見上げれば、花の散ったばかりの桜の葉は、透き通るような瑞々しさで、降り注ぐ春の日差しを優しく遮ってくれていた。