【続】0.0000034%の奇跡




「ずっとバンドでボーカルやってたんですけど…槙田芹さんの動画見て、見よう見まねでギター始めました」



「お、FENDERだね?」



「型古いやつです、同じのは高くてまだ手が届きませんでした」



「見せて見せて」と言うと戸惑いながらも嬉しそうにケースを開けてくれた。
近くのベンチに座ってチューニングする。
キレイに手入れされていて大切に使っているのが伝わってくる。



「すみません、動画撮っていいですか?こんな事、滅多にないんで」と一緒に居た男の子たちが言ってきた。



「どうぞどうぞ」



同じような学生たちも通りすがり「えっ!?」と驚いて立ち止まる。
誰かに電話して呼んで、それが何度か繰り返されて、徐々に人だかりが出来ていく。



「槙田芹さんがあたしのギター触ってる〜」と彼女は感激してくれる。



「お名前は?」



「成田チカです…!」



「あまり長居は出来ないけど、チカちゃんの為に歌いたいと思います」って言った時点で更に泣かせてしまっているけど「リクエストどうぞ」と促す。



「ヤバイ…えっと、えーっと……」