【続】0.0000034%の奇跡




「お家にピアノもあるんですね…凄い…!」



リビングから見える部屋にピアノが覗いてる。
最近じゃもっぱら瑚子が弾いてるけどね。
私は教える程度。
実家にあったピアノを孫にと譲り受けた。




急に隣に来たかと思えば「もしかしてピアノも弾けるんですか?」とまた子犬のような眼差しで訴えてくる。



「いや…あの、私はさわり程度で…」って聞いちゃいない。



「だからこんなに指が長くて細いんですね?」



「いや、それはどうだろう?まぁ中学までは習ってたけど本当大したものは弾けないよ?」



「弾いてください…!撮りますから」



やっぱりね。
そうくると思った。
もう目がそう言ってたもん。
わかりやすいユイちゃん。
動画も同時に撮ってるし。
こりゃひと肌脱ぐしかないのね。



誰でも一度は聞いた事があるだろうクラシックを弾いてみる。



撮影中は一言も喋らないユイちゃん。
勝手に選曲したけど反応がない為これで良かったのかがわからない。
一通り弾き終わると「どれだけ才能あるんですか!」って興奮気味に言われた。



絶対音感っていうの?
コードやキーボードなんかがあれば譜面がなくても自然と弾けてしまう。
耳から入る音は瞬時に再現出来る。
それは物心がついた頃から。