「もう一回言って」
「はい?」
「そういうのはちゃんと目見て言ってくれないと」
いちいち鼻につくのも相変わらずのようね。
マスクを取り真っすぐ彼を見て再び「ありがとう」と頭を下げた。
何を考えてるかはわからないけど、智くんが関わる事だから一応ね。
「え、キュンときた、また好きになっちゃうじゃん」
「施術、始めまーす」
全力で無視する私を隣の歯科衛生士に助けを求めてる。
「ユアちゃんからも何とか言ってよ」って誰にでも馴れ馴れしい奴。
「主人の前じゃ腰が低かったみたいだね?見てみたいもんだわ」
少しイジってやろうと思った。
鼻で笑ってやったのに。
「本当の俺はそっちだよ」って真顔で答えるから一瞬手が止まる。
「嘘ばっかり…」
目を逸して施術に集中する。
うがいの為にシートを起こしたら「嘘じゃないよ」って。
「こんな失礼極まりない患者を演じれば、ちょっとはセリの頭の中に住み着けるかなぁ〜と思って」
はぁっ!?

