何か上手く丸め込まれてる気がしなくもないけど、どんな作戦であれ私がもう関わる事はない。
そう、関わる事はない。
関わる………事は。
ない……はず…………
「よっ!セリちゃん!」
決して開きたくなかったカルテ。
歯科衛生士も歯科助手も皆苦笑い。
本当に予約取って定期検診に来たアイツ。
「よく来れたね」とやや呆れる。
どの面下げて来たのよ二重人格者め。
なんてことない顔しちゃって。
ムカつく、ムカつく、ムカつく。
相変わらず距離が近いっ!
「やっぱりこの目好きだわ」
「どうも」
「お願い、嫌いにならないで?」
「顔、近いから」
潤んだ瞳で見るなっ!
調子が狂う。
冷たくあしらっている私が何だか悪者に見えるじゃない。
診療態度が最低な医師に成り下がるわけにはいかないわ。
自然な笑顔に切替えないと。
「あ、雑誌の件……ありがとう」
シートを倒しながら言うと「えっ!」と起き上がる。
それ、危ないから。
こういう事言うと素直に寝てくれないのわかってたんだけどね。

