「とにかく、私の中では有り得ない話なの」
智くんを越える人なんて存在しないし受け付けできない。
どうにかなるなんて100%ない。
もし智くんが私から離れていくとか考えただけで涙が溢れ出る。
もう人生の一部だから………
「やだっ……槙田先生泣かないでくださいよ」
「え?あっ……ごめん」
ほら、智くんの事になると泣いてしまう……
この身に触れるのは智くんじゃなきゃ嫌なの……
「先生の気持ち痛いくらい伝わりましたよ…ご主人が大好きなんですよね」と背中をさすってくれる。
必死に涙を止めようと頑張るけどどんどん視界がぼやける……ダメだ。
ごめん…カナちゃん。
その後の午後診は真っ赤な目で戻った為スタッフにびっくりされた。
患者さんにも心配されちゃって情けないったらありゃしない。
カナちゃんに話した事で自分の中の張り詰めていた糸がプツリと切れたのかも。
「それが答えなら安心しました、返ってご主人への想いを再確認しましたね」
最後にそう言ってくれたカナちゃんの言葉に救われた。

