真っすぐすぎる瞳は私だけを捕らえている。
俳優としての演技なのだろうか。
彼の顔を初めてちゃんと見た気がする。
ただ立っているだけでも眩い光が差しているかのようなオーラ。




「セリが…欲しい……」




これは……演技だよね?
完全に素人をからかってるんだよね?
もしも仮に私が首を縦に振れば、滑稽な女だとあざ笑うんでしょ?




相手にしちゃいけないと荷物を手に取り出て行こうとしたらドアに手をつき開けさせてくれない。
彼を見るとまた至近距離で見つめ合う状態になった。
離れたいけどこのドアを開けないと外には出られない。




「ないの…?俺の入る隙…」




整った顔が悲しげに物を言う。
一体何なの…!?何で私なの!?
言葉の意味をすぐに理解出来なかった私は、彼の言う“隙”を無意識に与えてしまっているのか。




「俺は、本気で…奪いたいと思ってる」




声の震えを必死に抑えたかのような言い方。
これを演技だと思って見れば彼は大きな賞をもらえる値の素晴らしい俳優なんだろう。
だからこそ近い将来実現するであろう花道を自らの手で汚すんじゃないよ、全く。




「何度も言わせないで、あなたの入る隙なんか1ミリもないわ」