「もうしつこく言わないから嫌わないでよ」
ちょっと待って?
何か私が泣かせてるみたいな状況になってるじゃない。
自分もしゃがんで目線を合わせた。
「確かにしつこいですね、施術もスムーズに進まないし話は聞いてくれないしワガママし放題だし…」
「は、はい…すみません」
「あと、槙田ですから私」
「はい…槙田先生…」
なんだ、言えるじゃん。
今にも泣き出しそうな顔に手を差し伸べてしまう私はまだ甘いのか。
掴んだ手を引いて立ち上がらせる。
「じゃあ次もお待ちしていますね?万が一痛みが出れば救急でも診れますのでご遠慮なく連絡ください」
「はーい、槙田先生」
なかなか離してくれない手を彼はしばし見つめてる。
無理やり解いて会計の方へ促したら……
「指細いね?6号?」
「懲りてないね?本気で怒るよ?」
やっぱりしつこい彼にキッと睨み、思わず低い声で言ってしまった。
こっちがイライラするほど彼にとっては嬉しいみたいで余計に癪に触る。

