【続】0.0000034%の奇跡




待合室のソファーに大きな態度で座っている患者さん……
私を見るなり「遅いよ〜待ちくたびれちゃったじゃん」って。



黒いキャップ帽にサングラス。
ダメージジーンズにTシャツとラフな感じだけどオーラはハンパない。
一度きりで完璧に覚えたわ。
相変わらずタメ口きいてる苦手な患者……黒川春樹、改め黒川暖。



前回からまだ2週間足らず。
そして急患……
全然痛そうに見えないんだけど?



「エヘ、次の検診まで待てなかったや」



私にその笑顔は通用しないわよ?



「すぐご用意致しますのでもう少しお待ちください」



得意の営業スマイルで切り抜け着替えを済ます。
歯科衛生士も「休日なのにすみません、どうしてもって聞かなくて」とお困りの様子だ。



「とりあえず彼がそう言うならいつでも呼んでください、患者さん第一で頑張りましょう」



周りに迷惑はかけられない。
無理難題言う患者さんは五万といる。
出来る者が臨機応変に対応していくしかない。
その中でも情報共有が鍵を握る。
もう間違いなく彼はブラックリストね。