だから慣れてないんですよ、グイグイ来る人。
ライトをつけて施術を開始してもジーッと視線を感じてる。
落ち着いて知らんぷり。
何も動じない精神は仕事上身についてる。



「ふーん、凄い眼力だね?モテるのわかるわ」



施術中は喋らないでほしい。
助手の子もバキュームを躊躇っていたからそっと手を添えて一緒に口の中に入れる。
本当はぶっ込んでやりたいけど我慢。



でもまぁさすがは芸能人。
歯はキレイ。



「この近くでドラマの撮影してるけど見に来る?」



行くわけないでしょ。
喋れないように指も口の中に入れて固定する。
モガモガとまだ喋ろうとするから「も〜喋らないで」とため息混じりで言うといきなり頭を上げてこっちを見てきた。



「え?今の超可愛い!俺絶対ここ通っちゃう!」



クシャッと笑う彼に苛立ちを覚えるのは私だけだろうか。
いかんいかん、営業スマイルだ。



「ありがとうございます、でも器具が口の中にあるうちは危ないので喋らないでください」



「芹がそう言うならちゃんと守ります」



「槙田…!!先生ね?」