「ストップ」と言うからフリーズした私のマスクを勝手に取ってマジマジと見る。
な、な、なに!?



「へぇ、ほぼすっぴんなのにやっぱキレイなんだね?噂通りだ」



ニッコリ笑って「はい」とマスクを返され無言で付け替える。
何事もなかったかのように説明に入る私に「わ、塩対応〜」と笑う彼。



正直、ついさっきまで彼の名前も存在も本気で知らなかった。
お忍びで来る芸能人も初めてじゃないのに素っ気ない態度を取ってしまった私。



塩対応…ではない。
単にこういうのに慣れてないだけです。
いきなり自分のテリトリーに入って来られたらどう対応していいかわからない。
あんな無邪気な瞳で見られたら……しかもこの至近距離…!



「ねぇ、先生、俺の事知らないの?1回くらい見た事あるでしょ?」



この人、やたら距離が近い。



「ごめんなさい、最近テレビ見ないので」



「うわ、マジ?結構頑張ってんだけどな〜先生にも知られるようにもっと頑張ろ」



「はい、シート倒しますよ?お口開けてください」