【続】0.0000034%の奇跡




「凄いよ……マジで感動してる」



「いや、それ照れるから……でも、ありがとう…智くんが言ってくれなきゃずっとこうやって形には出来なかったよ」



隣に座り髪を撫でてくれるその手が好き。
優しい眼差しも微笑みも私に向けられていることが嬉しい。



顔を近付けたその時。



「あっ!アップルパイ先に食べたな?」



智くんの口元にパイの欠片が付いてる。
エヘヘとおどける智くんの肩に手を置いて動きを止めたら……



勢いよく顔を近付けてペロリと欠片を食べた。
びっくりして固まる智くんにドヤ顔で去っていく私。
アップルパイを頬張る瑚子とじゃれ合って自分も糖分補給。



食べ終わる頃、せっせと何をしてるのかと思えばひたすら動画編集をしてくれていた。
画面に歌詞が見れるように。
歌声に合わせて歌詞が浮かび上がるように。



ヘッドホンで聴きながら紙にペンを滑らせてどんどん編集されていく。
背後からジーッと見ていても全く気付かないくらい智くんも集中していて。
時折鼻をすすってる。



え?泣いてるの?



ティッシュで目頭押さえて「ヤベぇよ…」なんて、こっちが照れる。
智くん用に持って来たアップルパイ、気付かれないよう近くに置いて。
そっと後ろから抱きしめた。



「うわっ」とびっくりされたけど関係ない。
愛しすぎる……ヤベぇよ。
こんなに一生懸命で……
真正面から受け止めてくれて……
隠れて泣いてくれる人……
私には勿体無い……