【続】0.0000034%の奇跡




「ラララ…」で織り成す即興ハミングは今まで感じたこともない不思議な感覚。
全然手探りでもなくてひとつひとつの音が何の違和感もなく生まれていく。
もうすでに出来上がっていたメロディーをごく自然と指で弾く自分に一番驚いていて。



歌詞なんて無理だと謙遜したけど……もしかしたらほんの数分で浮かび上がるかもしれない。
自分の中の眠っていた何かが激しい鼓動を生み出した。



私は、この音を最後まで紡いで歌を完成させる………そう決意してしまった。



弾き終わった後、感極まる智くんと拍手してくれた瑚子をほったらかしにして携帯に歌詞を打ち込んでいく。
時折コードでメロディーを確認しながら頭の中で歌詞をつけて歌ってみる。



急に黙り込んだ私を不思議そうに眺めている瑚子。
アップルパイの焼き上がった音に反応してウキウキしながら智くんとキッチンへ。


まるで体に電流が走ったかのような衝撃を感じながら突き動かされる反動。
次々と浮かぶ歌詞に追いつかない手。
もどかしさの中で確実に仕上がっていくオリジナルソングにフッと息を吹きかけた。



通しで最初から弾いて頭の中で歌う。



「出来た………」


時間にしてわずか37分。
あまりにも頭を使ったせいで放心状態だ。