【続】0.0000034%の奇跡




何度も歌ってきたからこそ………
キミにちゃんと伝わっていますように。
それぞれの「愛してる」……
何色にも染まらない「愛してる」……



私たちを乗せて……メロディは続く……



最後のサビではゾーンに入ればやると決めていたアカペラ。
ほんの少しだけ音を止めた。
一瞬静寂になった後、再び奏で始める音は重みがあるから好き。
我ながら鳥肌が立つ……



目を閉じると目尻に涙………
泣かないと決めていたのに……
泣くと声が裏返るから……
大切な歌だからこそ……
最高に仕上げたい……
この声が続く限り幾つもの奇跡を乗せて……



私は………



歌うたいは今日も唄う………



特別な誰かのために





最後の一音がこぼれ落ちた時。



鳴り止まない拍手と真っ赤なお目々の新婦さん。
会話はなくとも通じ合えている気がした。



「ありがとうございました…そして、ご結婚おめでとうございます…!」



ステージから降りるとまたスタッフさんたちでスクリーンが作り出され、完成するとすぐさま中継が繋がる。
そこにはテレビでよく見るタレントさんたちが映っていた。



スタッフさんからイヤホンを受け取り耳につける。