何度も歌ってきたからこそ………
キミにちゃんと伝わっていますように。
それぞれの「愛してる」……
何色にも染まらない「愛してる」……
私たちを乗せて……メロディは続く……
最後のサビではゾーンに入ればやると決めていたアカペラ。
ほんの少しだけ音を止めた。
一瞬静寂になった後、再び奏で始める音は重みがあるから好き。
我ながら鳥肌が立つ……
目を閉じると目尻に涙………
泣かないと決めていたのに……
泣くと声が裏返るから……
大切な歌だからこそ……
最高に仕上げたい……
この声が続く限り幾つもの奇跡を乗せて……
私は………
歌うたいは今日も唄う………
特別な誰かのために
最後の一音がこぼれ落ちた時。
鳴り止まない拍手と真っ赤なお目々の新婦さん。
会話はなくとも通じ合えている気がした。
「ありがとうございました…そして、ご結婚おめでとうございます…!」
ステージから降りるとまたスタッフさんたちでスクリーンが作り出され、完成するとすぐさま中継が繋がる。
そこにはテレビでよく見るタレントさんたちが映っていた。
スタッフさんからイヤホンを受け取り耳につける。

