【続】0.0000034%の奇跡




そのタイミングで番組カメラが潜入し更にパニック状態になる場内。
すぐに照明は切り替わりステージに向かいスポットを当てる。



一瞬にして静まり返り、カーテンが落下し、ギターを抱えた私が現れた途端に皆さん立ち上がって喜んでくれた。
正面に新郎新婦、脇に両家親族、後ろに友人関係者たち。
中には泣いてる人も居る。



勿論、新婦の春美さんも………




私は、
この景色を一生忘れないだろう……



たくさんのキラキラ輝いた笑顔が眩しいほどに溢れていて、自然とこちらも笑顔がこぼれる。
奇跡が繋がった瞬間……



「高い所から失礼致します、槙田芹です。やっぱり来ちゃいました」



意外とステージとの距離は近い。
私自身、こんなふうに歌を披露するのは初めてのこと。
最高の初体験にかなりの興奮状態です。



すでに涙を流している姉妹に
「まだ泣かないで…まだ何もしてない」と言うとドッと笑いが起きた。
もらい泣きする前に気持ちを持っていく。



ふぅ…と息を吐いて目を閉じる。
これは私のルーティーン。


再び目を開ければ、もう一人の私。



「妹の夏美ちゃんから…大好きなお姉ちゃんへサプライズのプレゼントです。心を込めて歌います、聴いてください…斉藤和義さんで歌うたいのバラッド」



ひとつひとつの歌詞を噛みしめながら歌う。
魂を吹き込むことで私にしか出来ないパフォーマンスを生み出す。



音を紡ぎながら静かに燃えたぎる熱い想いは、全身全霊を込めるサビの部分へと移ろいゆく。



泣かないで……
私もこの歌が凄く好き……