ここまでがシナリオ通りの挨拶。
誰もがこれで終わりだと予想しただろう。
「はい、OKです」とスタッフさんの声がそのままスクリーン内に響く。
まだこのままビデオレターは続いているのだ。



回り続けるカメラの前で安堵の笑みをこぼし、素の私を見せる。
音声さんがピンマイクを外してくれた後、ここからがアドリブです。



「あぁ、やっぱり姉妹に会いたいなぁ〜これ見た時どんな顔してるのか気になる〜」



カメラには映っていないスタッフさんとそう話す私を見ながら、会場では笑い声が聞こえた。
春美さんも笑いながらスクリーンを見てくれている。



「いや〜でも会いたい…!会いに行っちゃダメかなぁ!?」



そのセリフに出席者のほとんどが立ち上がり驚いている。
「え?ウソでしょ?」って口々に言う。
仕掛け人の親族も驚いているフリで演技してくれていた。



皆さんがスクリーンに釘付けになったところで、GOサインが出たのでギターと共にこっそりステージ側に立つ。
ゾーンに入っている私は、目の前のカーテンが落下し皆さんと初対面するその時を待ちわびていた。



スクリーンの中の私は「うーん、やっぱり会いに行きます!」と言って一旦カメラから姿を消す。
「キャー!」と大歓声が起き会場はプチパニック状態に。
そこで再びカメラの前に戻ってきた私に気付き一瞬で静まり返る場内。



「あ、少しだけオシャレしてそちらに行きますね」と最後のセリフを言い終え、そこでビデオレターは終了した。