一瞬、時が止まったかのように固まる新婦の春美さん。
周りから悲鳴に似た歓声が鳴り響く。
みるみるうちに涙ぐむ春美さんにそっとハンカチを差し出す新郎さん。



スクリーンに名前が出て「ほらやっぱり」てな声がチラホラ。
良かった、誰これ?的な空気にならなくて。
それにしても披露宴のビデオレターでスクラブ姿って……まぁ、そこは歯科医師なので。



「初めまして、歯科医師の槙田芹です」



話し始めた私を見ながら春美さんが「なんで?なんで?」ってテンパっていて可愛らしい。
親族の皆さんもいい感じでドヤ顔されています。



「改めまして、ご結婚おめでとうございます。今回、小関夏美さんよりご依頼を頂きまして、私が昔、友人の結婚式の余興で歌った動画をお姉さんの春美さんが見てくださってたみたいで、恥ずかしながらあの拙い歌を毎日のように聴いてるというのをお聞きしました」



涙ながら頷く春美さんは妹の夏美さんに「ありがとう」と言っている。
必死で堪える夏美さんはスクリーンを見るよう促した。



「趣味の範囲で弾き語りをしていたんですが、まさかこんな形でこのような声が聞けて嬉しくて感謝の気持ちでいっぱいです。その場には行けないのですがせめてものという事で今回、ビデオレターを贈らせて頂きました。新しい家族の門出を心よりお祝い申し上げます。たくさん笑って素敵な日々をお過ごしください。槙田芹でした」