「じゃあ瞳ちゃん、体起こすついでに朝の診察は瞳ちゃんからやっちゃおうか。」

「え…。」

「大丈夫だよ〜。」

「…。」


瞳は明らかにしょぼん状態。


「ほらほら、そんなに落ち込まないのー。」


白井さんが励ましている。


「今日は楓先生は?」

「あーなるほどね。楓先生、早速心を掴んだみたいだね?」

「いや、あの…。」


瞳、赤くなってる。琴美先生はいたずらが成功したときみたいな顔してるし。


「楓は昨日夜勤してそのまま日勤だったから、昨日の夜帰って今日はお休みなんだよねぇ、ごめんね。」

「いえいえ!そんなそんな…。」

「じゃあ楓いないけど、診察頑張ろうか?」

「う、はい…。」

「そんなに固くならないで、まずは血圧と体温計ろうか。白井さん、おねがい。」

「はい。瞳ちゃんちょっと腕ごめんね。それからこれを反対の脇に挟んで。」


血圧計を巻きながら体温計を渡すっていう高度なことをしてらっしゃる…。

瞳もだいぶ慣れたみたい。浮かない顔はしてるものの、何とか普通に受けてる。


少しして体温計が鳴った。


「体温計くれる?」

「…先生、自分で出すからちょっと待ってください。」


お、瞳成長したじゃん!
まあ深呼吸して全く体温計を見ないまま変な方向に差し出してるけど…。


「クククッ。」


琴美先生は笑いながら手を伸ばして受け取ってるし。

それに反応して目を開けた瞳はえ?って顔してるし。

何だこの光景…。笑えてくる。


「お、瞳ちゃん、熱昨日の夜からだいぶ下がったね!」

「え、本当ですか!?」

「うんうん!ほらー。」


えー、せっかく目を瞑って渡したのに瞳に体温計見せちゃうの?


「いや、まだあるじゃないですか…。」


明らかに瞳は落胆してるし…。琴美先生はこういう所が抜けている。


「そりゃ、そう簡単にあの高熱は下がらないよ〜。でも7度台まで下がって来てるからもうひと頑張りして、治療も頑張ればすぐ退院出来るよ!」

「ほんとに?!」

「うん。それに、そんなに長期で入院しても困るでしょ?」


それは困る。授業に置いていかれちゃうよ。

瞳も頷いている。


「目標は1週間。1週間で退院出来るように頑張ろう。もちろんその後の通院は少し頻繁にしてもらうけど。晴ちゃんもね!1週間だよ。」

「いつもより短くない?」

「うん。それは君たちがもう高校生って言うのと、入学早々こうなったっていうのと、まあ他にもいろいろ考慮してだな。」

「それっていいわけ…?」

「だから頻繁に通院してもらうって言ってるじゃん?」

「なるほど?」

「そういう訳で気合い入れていくよー!」

「はーい。」「ほーい。」