もう泣きそう。
必死に涙を我慢してついたての中に入る。


「7席 倉内瞳です、お願いします…。」

「服あげてくださいね。」


がんばってちょっとだけ、おへそのところぐらいまで上げた。


「ちょっとごめんねー。」


後ろから看護師さんが胸の下まで服をガバッとあげて、下着も浮かせてきた。

この時点で全身にゾワッと鳥肌がたつ。
本当に苦手。医療行為がとにかく苦手。


聴診器が滑り込んでくる。前の人の音も聞いているからなのか、なんとも生温くてなんとなく肌に張り付いてくるような感じがする。本当に嫌な感覚…。
そして、服の中で聴診器を当て直しているのも嫌だ…。


今の私には"緊張"の2文字しかない。そして気の所為かもしれないけれど、長い…。

本当に、お願いだから早く終わって…!
しばらくしてお医者さんが聴診器を抜いた。
やっと終わったと思いきや、


「ちょっと首を触りますね。」

くびぃ?!
なんで?!だけど何も言わないうちにもう触ってる。


「熱あるんじゃない?はかった?」

「はかってません…。」

「そうか…。
とりあえず、全部終わったら早く帰って早く寝ること。お家の人に連絡とってもらう?」

「大丈夫です。」


親にバレたら最後。いつもの事だけど親には隠す。


「わかった。
それから、今までに持病があるって言われたことは?」


持病…?なんで?


「持病、ですか…?ない、と思いますけど…」

「そっか、わかりました。
じゃあ次のところに行ってください、おだいじに。」
「ありがとうございました。」


やっと終わった…
あと1つ…

これも重たいな、嫌だな。そんなことを思いながら廊下を進む。


途中で晴に口パクで


「みゃ・く」


と伝えた。


この時、私は昔喘息を患っていたことを忘れていた。というより、そもそも喘息を持病と結び付けられていなかった。年齢的にも覚えていないような年齢でもあったし。

後々、この喘息が私を再び苦しめるなんて、この時はまだ思ってもみなかった。