部屋に戻り、ベッドに入るとすぐ寝てしまったらしい。
しばらくして話し声が聞こえてなんとなく目が覚めた。
「ん…。」
なんとなく体を起こす。
「あれ、起こしちゃった?ごめん。」
布団を持ったお母さんと琴美さんが部屋の中にいた。
「どうしたの…?」
眠たい目を擦りながら聞く。
「うち、客間無いし。遠藤さんには申し訳ないけど今日は楓の部屋で寝てもらおうと思って。」
「なるほど…。」
「寝てていいよ。」
「うん…。」
なんとなく微睡んでいるとお母さんは布団を敷き終えて出ていったらしく、琴美さんに話しかけられた。
「楓ちゃん、起きてる?」
「起きてますよー。」
「寝る前にちょっと聴診していい?」
「えー…。」
「ほら、夜だし。発作が出やすくなる時間じゃない?」
「たしかに…。」
「ね、いい?」
「…お願いします。」
「何もしなくていいよ、寝てていいからね。」
そう言いながら私のパジャマのボタンを外していく琴美さん。
「ちょっとごめんねー。ゆっくり深呼吸しててね。」
1つ頷いて深呼吸に務める。
慣れてきたのか、琴美さんの聴診器にそんなに嫌悪感を感じなくなってきた。
なんだかとても長く感じる。琴美さん、念入りに聴いているみたい。
眠たい。目を閉じるとそのまま浅い眠りに落ちていってしまった。
「はい、お疲れ様。やっぱり良くないね…って寝ちゃったか。」
(目をつぶってるだけ、でももう開けたくないの…。)
「ゆっくりおやすみ。朝方発作が出るかもしれないけど、どの道明日は病院。しっかり寝て体力つけなきゃね。おやすみ。」
(おやすみ…。)
パジャマを直しながら話しかけているみたい。なんとなく話しかけられて応答しようとしているのは分かるけど膠でくっついたみたいに目も口も開かない。
そのまま琴美さんが電気を消して布団に入る頃にはしっかりと深い眠りに入っていた。



