「じゃあ瞳ちゃん、やろっか。できそう?」

「うーん、多分?」

「なんで疑問?」


ちょっと笑われる。


「始めるよー。手順はさっきの晴ちゃんのと同じだから。
白井さん、お願い。」

「はい。」


白井さんが私の血圧を測ってる。その間に遠藤先生が私の脈をとる。

なんかあんまり緊張しないや、このまま寝れそうだな…。


「琴美先生、これ。」

「ん?あら。瞳ちゃん、低血圧?」

「へ?」

「上は100ないし、下も60弱だよ。」

「?」

「ちょっと経過見ないとわかんないか。」

「えーっと…?」

「うん、まあ今は気にしなくていいよ。」

「はあ…。」

「次行ってもいい?聴診したいんだけど。」


私は頷いた。

白井さんが私の病衣を開ける。
ちょっとゾワッとした。やっぱりだめなのかな…。涙が出そうになる。


「大丈夫だからー。」


白井さんが励ましてくれる。


「うん、大丈夫だよ。じゃあちょっとごめんね。」


遠藤先生が聴診器を当てる。

今度はゾクッとした。やっぱりこの感覚は嫌みたい。
ギュッと目を瞑った。

白井さんが手をさすってくれる。


「瞳ちゃん、深呼吸しようか?」


私、息を止めていたらしい。遠藤先生に言われて深呼吸しようとして初めて気がついた。


深呼吸すると少し落ち着いた気がする。


「おっけー!じゃあそのまま深呼吸しててね。何も考えずに呼吸することだけ考えようか。」


私は頷いて返事をした。そして深呼吸することに意識を向ける。

気にはなるけどさっき程酷い不快感はなくなった。


「はい、いいよー。じゃあ悪いけど背中からもら聞かせてね。」


体の向きを変えて背中から聴診器を当てられる。


「またゆっくり深呼吸しててね。」

「はい。」


遠藤先生は魔法使いだろうか…。


ふとそんなことを思う。言葉の使い方が巧みで、それによく人の事を見てる。

…気がする。


考え事をしていると直ぐに時間が過ぎてしまう。

遠藤先生の、おわりー、の声に現実に引き戻された。