今から3年前のこと

鷹松中学に入学して間もない頃、仲良くしてくれた吉田愛菜(よしだまな)ちゃんと通学路をふたりで歩いていた時だった。

「今日はテストだよね、胡桃は?勉強してきたの?」
「しようとしたらさぁ寝ちゃったんだよね、学校行ってからしなくちゃ、全然わからないよ」
「だよね、数学つまんないしね、じつは私も寝ちゃったんだあ、胡桃と同じで全然わからないよ、どうしよう?」
「ダメダメだね!あはは…」
「はは…」

ふたりで話していると、後ろから数人の生徒が歩いてきた。


「かずまはいいよな、頭いいから!」
「渡部くんて頭いいんだ、じゃあコミヤンは頭良くないの?」
「カノン!何言ってんだよ!バカとはなんだよ、バカとは!周りの子たちに聞こえんだろ!」
「ちょっと!バカとは言ってないでしょ!あたしは頭が良くないって言ったんだから…、ふんだ…ねっ~一真くん!」
「どっちでもいいけどさ、笑われてんぞ、おまえら…」

「(コミヤンの声大きいから…)
(違う!カノンだろ…)」


私達を追い越して行ってしまった。

あの背の高いほうの人、ちょっと気になって、つい、うしろ姿を目で追ってしまった。

「ふふッ可笑しかった!小宮くんて言ったかなぁ…ねぇ胡桃?…ん?どうかした?」

「あ、うん…あの背の高いほうの…」

「あれが!渡部くんだよ、ちょっとクールだけど、かっこいいってみんな言ってる人!」

「ふ~ん…」

「もしかして胡桃も、そう思った?」

「まぁね…」

「やっぱり」


その時、初めて渡部くんのことを知った。