レクイエムに共鳴する

悲しみのマイナー和音が

メジャーなオルゴールの音色に変化していった。

私は、涙を拭いて立ちあがると

スカートのホコリを叩き落としながら、誰もいない1組の教室へ入った。

メソメソしていても、渡部くんに会えるわけじゃないし、それに、この町のどこかに彼はいるんだ。

いつかは会える日がきっとくる、必ず

どんまい!くるみ!

そう自分に言い聞かせたあと、廊下のプリントを見て席順を頭に入れ、自分の席に座って教室の中を見渡した。

隣の片平さんとはお友達になれそうかな

窓際の柚木くんは…よくわからないけれど、たぶん優しい人なのかな?

私がフラついた時、気遣ってくれたし…
できればお友達になりたい、柚木くんごめんね…

素直になれなくて

明日、もう一度お礼を言わなくちゃ



そうだ…


柚木くんの下の名前、良く見なかったから…

席順のプリントをもう一度確認するため、廊下に出ようとすると


「くるみ!?」

「お母さん…」

「調子は!? 大丈夫なの!?」

「うん!」

「もう、心配したわ、でも良かった、元気になって…さあ、早く帰りましょう」

「うん… アッ! ちょっと待ってて」

えっと…柚木くんの下の名前…

窓際の席の、ゆずき・か・ず・・・ま!

…かずま?

嘘でしょ・・・こんなことってある!



渡部くんと同じ名前だなんて!