あの時カノンを待っている間、窓ガラス越しに、オレンジ色に染まった校庭を見ていたら、帰ろうとしていたひとりの女子生徒の姿が目に入って、しばらくその様子を眺めていたんだ。


なんとなく気になって、彼女のことを目で追っていると、後ろから友達が駆け寄りながら、彼女を呼んでいるように見えた。


彼女は立ち止まると、その子に手をふりながらこっちを振り向いた…


その時、彼女の笑った顔が鮮やかに見えて、急に身体が熱くなった…


花火大会の時に見せた、バラの花びらのように咲いた…

彼女の無邪気な笑顔に、べた惚れしてしまったようなんだ。

……


「かずまくん?…」


少しすると、カノンが教室へ入ってきた。


「…ごめんね…またせちゃって…」


「いや…オレに話って?…」


「かずまくんに…お願いがあるの…」


「 またかよ、デートなら、断るよ…」


「ち、ちがう!…


あたしの、気持ちを聞いてほしいの!」



「気持ち?…」



「あたし…

かずまくんの好みの女の子になるから…

言われた通りに何でもするから…

だから、わたしと…

真剣に………

つき合ってください!…」



「悪いけど…それはできない…」



「……
がんばって、スッピンのまま、髪型も…同じにしたつもりだったのに…何がたりないの?…どうすれば…わたしを見てもらえるの!?…。…。…」


そう言うと、カノンは…

泣きながらオレに走り寄って来たんだ。


カノンは、自分でもわかっていたんだと思う…


愛原に対するオレの気持ちが…



「…カノンのことは嫌いじゃないよ…
けど、愛原のことが好きになったみたいなんだ…
今は、彼女のことしか考えられない…
たぶん、この先も、ずっと…
だから、ごめんな…」