昼間はポカポカ陽気でも、夜になるとブルブル震えるくらいに寒さが増し、最終電車を待つ誰もいないホームは、冷えて凍えるくらいに寒い。

心の中にぽつんと空いた穴に、冷たい風が吹き抜けるようで、更に寒さを強く感じさせる



しばらくベンチに座り、電車が来るのを待っていると、誰かの足音が聞こえてきた。

その音は私のいるベンチの前で止まった。

「ホラ!」


その声…


私の背中に、まだ、ぬくもりが残る、大きなジャケットを羽織らせてくれた。


柚木くん!


急に陽だまりの中にいるように、私の身体はポカポカになってきた。


彼は私の横にピッタリと座った。


「少しはましかな?」


「うん…ありがとう…

すごく、暖かい…


でも、どうしてここへ?」


「俺らのせいで遅くなってしまったから」


「…」


「それにおまえ、貧血とかあんだろ?…一応電車に乗るまではさ、一緒にいてやるよ…」


一緒に?…


柚木くんと一緒…

暖かい。

柚木くんがそばにいてくれるだけで、暖かい。

やっぱり…

やだ…

一緒に いたい…


『キー・・・・ガタン・・・』


遠くから、電車のくる音が聞こえる。

電車が来たら、柚木くんともお別れ…

柚木くんに返そうと思った。

私の質問に、真剣に本当のことを話してくれた柚木くんに、私も本当のことを言おうと。

私の気持ちを…


決めた!!


「あの!…話したいことがあるの…

私の…気持ちを聞いて下さい…



中学一年の時から、ずっと、渡部くんのことが気になって

毎日、渡部くんのことを見ていたの…

3年間、あなたのことを考えない日は無かった。

そして、今も、柚木くんのことを見ているだけで、私は、幸せになれる

あの…


私、柚木くんのことが…


ずっと、ずっと…


ずっと!……


『ガタンガタン…ガタンガタン…ガタン……キー……シュ〜…』


好きでした……」



気持ちを伝えたと同時にホームに電車が来た


ジャケットを柚木くんに返すと、電車に乗り


彼が見えなくなるまで、手を振っていた。