この夢のような時間もあと少しだけ、このまま一緒にいられたらどんなに幸せだろうか

好きな人とずっと一緒にいられたら、どんなに
楽しいだろうか

このまま離ればなれになって、一日中彼のことを考えて、不安な日々を過ごしていても、何も変わらない。

一緒にいたい、柚木くんとずっと一緒にいられたら…


もう、何もいらない…


「あの!」

「なに?」

後ろから後便の生徒達の声が聞こえてきた。

「後ろから、みんなが来てるから…あの、もう大丈夫、降ろして…」

「そんなこといちいち気にしてないから、愛原のことの方が、優先だろ?」

「柚木くん…」

彼は後ろから生徒達が来るのも構わず、私を背中に乗せて、階段を一気に駆け上がった。

いちばん上の階段に着いたとき、私は思い切って柚木くんに話した。

「柚木くんに話したいことがあるの、とりあえず降ろしてくれない?」

柚木くんがしゃがみこむと、私は柚木くんの首に巻いた両腕を解いて、彼の背中から降りた。

柚木くんは立ち上がると、ゆっくり振り向いた。

彼の視線が私に向けられているのがわかる。

「柚木くん…あ、ありがと…」

目の前に柚木くんがいる、やっぱり顔が熱くなって緊張しちゃう

「無理すんなよ…」

「う、うん…」

今しかない!

「あの!…」

「…何?」

後ろから生徒達の声が聞こえてくる。

「わ、わ…私…」

「…話したいことって?」

「な、なんでもない…柚木くん、ありがとう…そ、それじゃあ…」

何をやっているの!くるみのバカッ!

絶好のチャンスだったのに、柚木くんと二人きりの最高のチャンスだったのに!

バカバカバカ!…

しかも、柚木くんを置き去りにして、ひとりで来てしまって最低!…

もう…二度と告白なんてできないよ…

柚木くんから離れ、ブルーのハートを抱えて、とぼとぼ歩いていると

後ろから声が聞こえてくる


「愛原!調子悪くなったら!…その時はすぐ、声掛けろよなッ!…」

!!!…柚木くん!?

私は立ち止まると、ゆっくり振り向いた。

柚木くんに微笑みながら、彼の言ってくれた言葉に、大きくうなずく


紅色に染まった頬に


涙を流しながら…