春ちゃんが消えると、山下君は話しずらそうに口を開いた。



「日野さん…お昼休み少し"時間"ある?
実は聞いて欲しい歌があるんだ。
俺、日野さんのために曲作ったんだ!もし良かったら…いや、どうしても聴いてほしい!俺の気持ち!中庭の噴水広場で待ってるから!」



中庭の噴水広場で…

お昼休みには多くの生徒がご飯を食べる場所。

しかも晴れてる今日みたいな温かい日はごった返すほど人気な場所。



日本語は得意でなくても、こう言っちゃなんだが、自分の顔のイケメンさは自覚しているわけで、自分に対する好意を読むのは得意だ。


だから直ぐにその歌がそういう曲なのだと分かった。





告白ってことですよね?

好意は有りがたいですが…
そんな目立つ場所で告白されるのははばかられます。

きっとこの方は答えを直ぐ聞きたいでしょう。
私としても公共の面前でフルのは忍ばれます。

しかも、全く好意をもっていないので断る前提で聴く…




苦行です…




出切るだけ傷つけずに穏便に断りましょう。




「すみません。山下君の曲を聞いてる"暇"はありません。」


「えっ…」



傷つけないようニコリと笑って言ったのだが、大和君は一瞬固まった。



「山下ー、先生呼んでるよー」



廊下の方から山下君を呼ぶ声がして、これはチャンスと待たせるのは悪いと急かすようにあちらに誘導する。



「山下君、早く"消えて"下さい。」



山下君と入れ違いに教室に入ってきた春ちゃんが首を傾げ、不思議そうに聞いた。



「山下君泣いてたけど、なんかあった?」




思い当たらず、私も首を傾げることしか出来なかった。