ツンデレ黒王子のわんこ姫

旅館の周りの観光スポットは、こじんまりとしたガラスアートの店やお土産屋さんの並ぶ通りと、穏やかに流れる川を挟んだ遊歩道だった。

夕方近くになり、秋とはいえ、まだ暑い日差しも少しずつ弱まりつつある。

「綺麗な景色ですね」

そういう芽以の綺麗な横顔を、オレンジ色の夕陽が優しく照らしている。

「ああ、とても、綺麗だ」

芽以の耳元で囁く健琉の声は、尋常ではないくらいに色気を含んでいて、とても扇情的だった。

「た、健琉さん?」

小首を傾げて、頬を真っ赤に染めながら健琉を見上げる芽以は、超ど級の可愛さだ。

健琉は芽以の頭を自分の胸に押し付けると、

「所構わず、そんな顔するな」

と、怒りを込めて言った。

散歩道を通って帰宅途中の男子高校生の集団が、芽以を見つめて、顔を赤らめているのが見える。

「何?あれ芸能人?女のコめっちゃ可愛いんだけど。グループのSNSにあげようぜ」

少し離れているにも関わらず、スマホで二人を撮影しようとする高校生達に、健琉は芽以の手を引いて近づいた。

「肖像権ってご存知ですか?」

突然、目の前に現れた美男子に、高校生達は驚いてスマホを隠す。

「,,,健琉さん?どうしましたか?えっと、こんにちは」

更に、健琉の後ろからヒョイっと顔を出した芽以の可愛さに度肝を抜かれる。

「いえ、ぼ、僕たちは、お姉さんが綺麗だなーって」

「えっ、あ、ありがとう、ございます。でも、こちらの健琉さんの方が美しいですから」

真っ赤になる芽以を見て、男子高校生達が呆然とする。

「マジ、天使,,,」

「写真撮らせてもらっていいですか?お兄さんと一緒でいいですので」

「えっと、それでしたら,,,」

「ダメに決まってる」

健琉は、あの得意の黒王子スマイルで高校生達を見つめる。

「君達高校生が、こいつの写真を使って何するかくらい想像は容易い。お子さまはグラビアアイドルで抜いてろ」

「健琉さん、抜くって何をですか?」

純粋な芽以の疑問に、高校生達は顔を真っ赤にして駆け出して行った。

「馬鹿、芽以。ウブな癖に見境なく獣を呼び寄せやがって」

「???」

首を傾げる必殺技を、惜しげもなく人前で披露する婚約者に、健琉はため息をついた。

この純粋さをあの桃山靖国も狙っているのだとしたら一刻の猶予もない。

芽以のスピードに合わせて恋愛してきたが、健琉も腹をくくった。

「愛想を振り撒くワンコには、今度こそお仕置き決定だな」

そう言って、健琉は不敵に笑った。