芽以が同期二人との昼食で離席した後、健琉はいつものように、同期で営業部の里中葵生(25)と待ち合わせ、社員食堂に向かった。
葵生は、入社当時から健琉の最も親しい存在である。
踏み込まず、かといって突き放す訳でもなく、お互いが絶妙な距離感で接することのできる相手だった。
"二人は付き合っている"
と、一部の腐女子が噂していることは知っていたが、次々に湧いて出て来て、猫なで声で迫ってくる"勘違い女達"に辟易していた二人は、ご都合主義で、この状況を放っておくことにしていた。
「さて、健琉のわんこはいるかなー?」
社食に着くと、葵生は楽しそうに中を見渡した。
社食までの道すがら、健琉が芽以のことを
"俺が実家で飼っている犬みたいな奴"
と説明したため、葵生は芽以のことを
"わんこ"
と呼ぶことにしたらしい。
「わかった、あの子だろ」
葵生がポンポン、と健琉の肩を叩き目配せをする。
今では恒例となった、このイケメン二人の社食でのやり取りを、今か今かと待ち望んでいた腐女子集団が"ほぅ"とため息つく。
二人は当然、無視している。
健琉が、葵生の目線をたどると、芽以の耳元に片手を添えて耳打ちしている新入社員の沢城の姿が見えた。
沢城優太は、女の子かと見間違いそうな可愛い外見をしていた。
にもかかわらず、視線は芽以にロックオンしており狼の顔をしている。
「アイツ、何隙を見せてんだよ」
二人の近すぎる距離と、嫌がりもしない芽以の様子にに、健琉は無性に腹が立つのを感じていた。
「あー、あの子完全にわんこ狙いだねー。健琉」
葵生がクスクスと笑った。
「知らねーよ。女同士でじゃれてるようにしか見えねーだろ。」
ふぃっと、健琉は顔を背けた
「あー、ますます近いー」
再度、葵生が肩を叩いたため、意図せず、健琉は芽以の方に目を向けることとなった。
健琉に気づいた芽以は、遠目にお辞儀をした。
続いて、左側から沢城に呼ばれていることに気付くと
まるで、これからキスするのでは、と思える程、沢城に顔を近づけ、
一つのメニューを覗き込んで楽しそうに談笑を始めた。
メラメラと嫉妬の炎が沸き上がるのがわかった。
「あー、この2週間で随分わんこの懐に潜り込んじゃってるぞ。あいつ。やばいねー、健琉」
健琉の顔から表情が消えた。
"あいつは俺のもんだろ"
"何もわかってないわんこには躾が必要だな"
囁く葵生の隣で、腹黒い王子の顔を覗かせた健琉の色気に、その場に居合わせた腐女子がため息をついたのは言うまでもない。
葵生は、入社当時から健琉の最も親しい存在である。
踏み込まず、かといって突き放す訳でもなく、お互いが絶妙な距離感で接することのできる相手だった。
"二人は付き合っている"
と、一部の腐女子が噂していることは知っていたが、次々に湧いて出て来て、猫なで声で迫ってくる"勘違い女達"に辟易していた二人は、ご都合主義で、この状況を放っておくことにしていた。
「さて、健琉のわんこはいるかなー?」
社食に着くと、葵生は楽しそうに中を見渡した。
社食までの道すがら、健琉が芽以のことを
"俺が実家で飼っている犬みたいな奴"
と説明したため、葵生は芽以のことを
"わんこ"
と呼ぶことにしたらしい。
「わかった、あの子だろ」
葵生がポンポン、と健琉の肩を叩き目配せをする。
今では恒例となった、このイケメン二人の社食でのやり取りを、今か今かと待ち望んでいた腐女子集団が"ほぅ"とため息つく。
二人は当然、無視している。
健琉が、葵生の目線をたどると、芽以の耳元に片手を添えて耳打ちしている新入社員の沢城の姿が見えた。
沢城優太は、女の子かと見間違いそうな可愛い外見をしていた。
にもかかわらず、視線は芽以にロックオンしており狼の顔をしている。
「アイツ、何隙を見せてんだよ」
二人の近すぎる距離と、嫌がりもしない芽以の様子にに、健琉は無性に腹が立つのを感じていた。
「あー、あの子完全にわんこ狙いだねー。健琉」
葵生がクスクスと笑った。
「知らねーよ。女同士でじゃれてるようにしか見えねーだろ。」
ふぃっと、健琉は顔を背けた
「あー、ますます近いー」
再度、葵生が肩を叩いたため、意図せず、健琉は芽以の方に目を向けることとなった。
健琉に気づいた芽以は、遠目にお辞儀をした。
続いて、左側から沢城に呼ばれていることに気付くと
まるで、これからキスするのでは、と思える程、沢城に顔を近づけ、
一つのメニューを覗き込んで楽しそうに談笑を始めた。
メラメラと嫉妬の炎が沸き上がるのがわかった。
「あー、この2週間で随分わんこの懐に潜り込んじゃってるぞ。あいつ。やばいねー、健琉」
健琉の顔から表情が消えた。
"あいつは俺のもんだろ"
"何もわかってないわんこには躾が必要だな"
囁く葵生の隣で、腹黒い王子の顔を覗かせた健琉の色気に、その場に居合わせた腐女子がため息をついたのは言うまでもない。

