「とにかく、明日、私から黒田さんには話をしよう。とりあえず、来週の挙式は延期だ」

父の言葉に絶句する芽以。

まさに天国から地獄に突き落とされたような感じだ。

「芽以、返事は?」

「,,,」

「芽以!」

剣士の言葉に、芽以は頷くことができずに、リビングを飛び出していた。

これまで父に逆らったことは一度もない。

しかし、芽以は、嘘でも健琉との結婚をなかったことにはしたくなかったのだから頷くことができなかった。

涙がポロポロと零れ落ちる。

反抗もしなければ辛いと思ったこともなかった。

それほど芽以は、家族や執事、友人に守られてきたのだ。

「健琉さんに会いたい,,,」

芽以は顔を両手で覆ってしばらくなき続けるのだった。