続く鉱山列車のアトラクションは、男性にも人気のアトラクションであったので、待ち時間が1時間30分あった。

健琉はファーストパスを取ると

「先に食事をとろう」

と言った。

人気の店はどこも満席だったので、食べ歩きのできるシーフードチャウダーを人気のワゴンで購入して食べることにした。

4月の夜風はまだ冷たく、温かなクラムチャウダーは体にしみわたってくる。

「美味しい」

芽以は、ナンで包まれているシーフードチャウダーを握りしめて呟いた。

「今日は初めてのことばかりで、幸せすぎてどうしていいかわかりません」

周りの学生が当たり前に持っている機会を奪われていたのかと思うと芽以がかわいそうに思えてきた。

しかし、

「全部、健琉さんのお陰ですね。私、健琉さんが婚約者で本当によかった」

芽以の父親の思惑はある意味達成していた。

ちょっと優しくしてもらっただけで、ここまで婚約者の健琉を信用するのは、娯楽と男性を知らずに育ったからだろう。

"婚約者が他の男でも、こうやって刷り込みされてたのかな?"

芽以からの掛け値なしの信頼に、健琉の胸に不安がよぎる。

「あ、当たり前だろ?俺以外の男に絶対絆されんなよ」

健琉は芽以から目をそらすと、少し耳を赤らめて言った。

「ほら、言った傍から隙だらけだぞ」

と健琉は苦笑して、芽以の頬についた食べこぼしに手をやり拭った。

段々と芽以の心は健琉で一杯になっている。

「はい、ご主人様」

芽以は、健琉の肩に頭をコテンと乗せると、安心したようにシーフードチャウダーを握りしめた。