【先に帰ってる】

私は和海にLINEして、通知25件になっているメールボックスを開いた。

授業中はサイレントに設定しているから気づかなかったのだ。

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水沢有紀様

別れろ

鈴木晴香
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水沢有紀様

お前みたいなブスは
カズくんには
相応しくないんだよ

鈴木晴香
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水沢有紀様

消えろブス

鈴木晴香
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三件見たところで心が折れ、スマホの電源を切った。

「水沢、今日予定ある?」

「……ないけど」

いつもなら和海が帰ってきたら、お菓子を食べたり、テレビを見たりして過ごすがそんな気分にはなれない。

夕飯を作る時間までは暇だ。

「じゃあ、カフェ行かない?駅前に新しくできたところ」

「そこ以外がいい」

あのカフェは和海が女性と腕をくんでいたことを嫌でも思い出す。

「それなら、何でもいいから甘いもの食べよう」

「分かった。よし、行こう」

私は鞄を持って、教室を出た。



今は会いたくない人が下駄箱にいた。

靴を履くには通らないと行けないところに。

「有紀、先に帰るって何?」

和海はいつも通り話しかけてきた。

そして、私が宮沢君の手を掴んでいるのを見てすうっと目を細める。

「なんで、こいつといるわけ?」

和海が黒のオーラをまとい始めた。

「キスしてた奴だろ」

和海が宮沢君に掴みかかろうとした。

「……宮沢君行こ」

私は和海と宮沢君の間に体を滑り込ませて、宮沢君の手をひいて逃げるように走った。