「水沢、何かあったでしょ」

勘の鋭い宮沢君が授業中にボーッとしていた私に言った。
っていうか、宮沢君は私のこと水沢って呼び捨てだったっけ。

「今日だって、何故か会長と一緒に登校してないし、いつもなら寝てるのにボーッとしてるし」

「なんでもない」

私は先生のほうを見ながらこれ以上宮沢君の話しを聞きたくなくて早口に言った。

「絶対、何かあった。もしかして、会長が浮気したとか」

ピクっと体が反応した。

どうして宮沢君は何でもお見通しなのだろう。

私はまた心臓が痛み出した。

「図星か。水沢と会長付き合ってたんだ」

宮沢君はため息をついた。

「俺もそろそろ本気出さないと。今はチャンスか……」

宮沢君は一人でブツブツ言っている。

私は和海のことを考えただけでどんどん痛くなっていく心臓を宥めるのに精一杯で。

どうしてこんなに痛いのか。
どうしてこんなに泣きそうになるのか。

もう何がなんだか分からない。

ああ、まただ。

昨夜もこれで不安に押しつぶされて苦しくて。結局一睡もできなかったのだ。

ああ、痛い。
もう、こんな思いになりたくない。

暗い穴に心が落ちそうになったとき

___ぽんっと頭に手が置かれた。

「大丈夫か?」

私を現実世界に戻してくれた宮沢君は心配そうに私を見た。

「あ、うん」

私は頭をふって考えるのをやめた。