明日は楽しみにしていた旅行だ。

なのに、

「有紀、明日ちゃんとした格好で12時にここに来て」

バイト中に母がGoogleマップでどこかのレストランを指しながら言った。

「何言ってんの?明日は和海と旅行に行ってお泊まりするから無理だよ」

「ダメよ。和海君には言っとくから」

「嫌だ。私楽しみにしてたの」

「でもね」

うだうだと言ってくる母に私はキレた。

「そんなんならもっと早く私に言うべきでしょ!そしたら予定空けといたのに!いきなり今日言うとか意味分かんない!」

「しょうがないでしょ!久しぶりにお父さんも大翔(兄)も予定が空いたから家族でご飯食べようって昨日そういう話になったのよ」

母も怒鳴った。

「そんな事情知らない!私は和海と旅行に行くの!!」

私が叫んだ時に、ギイっと従業員の部屋のドアが開く音がした。

「有紀、明日の旅行延期しようか」

和海が私達の怒鳴り合いを聞いてそう言った。

「えっ」

「和海君、お言葉に甘えていいかしら。ごめんなさいね」

「はい」

「ありがとう。旅館のリャンセル代は私が払うわ」

母は部屋から出て行った。

「なんで?」

「旅行は急ぐ話じゃないだろ。でも、家族でご飯たべるのは明日しかできないから」

「………分かった」

私は不満たらたらに了承した。