「和海……」

今は三時間目の英語の授業。
私は昨日の夜からずっと和海のことを考えている。

「水沢さんどうしたの?そんなに怖い顔して」

席替えをして隣の席になった宮沢君が言った。

「あ、ううん。なんでもない」

「そう?かずみって聞こえたけどそれって会長のこと?」

この人地獄耳だ。

「なんでもない」

「えー、そんなこと言われると逆に気になるじゃん。会長は皆の王子様だったのに、この頃冷たいのは水沢さんのせいだっていう噂は本当?」

「知らない」

「じゃあ、水沢さんをいじめた先輩は会長の手で退学にしたっていう話だし、会長と水沢さんって特別な関係だったりする?」

「特別な関係?」

「恋人とかさ」

「違う。恋人じゃない。あのさ、さっきから私に質問してくるよね」

「不快だった?」

「別に。私からも聞いていい?」

「僕に答えられることならいいよ」

「好きって何?」

「……あはははははははh」

宮沢君はいきなり腹をかかえて笑い出した。皆がこっちを向くが気にしてない。
宮沢君ってこんなキャラだっけ?

「真面目に聞いてるんだけど」

ムカついてぶっきらぼうに言った。

「そんなの、好きって分かったら好きなんだって」

宮沢君はまだ笑いおさめてないのかひーひーいいながら答えた。

「いつ分かるの?」

「さあ?人それぞれでしょ。あるとき急にいなくなって気づいたり、他の女に妬きもちやいてるときに気づいたり。まあ、意識しないと水沢さんなら一生気づかずに終わってそう」

最後は私を馬鹿にした。

「水沢さん、教科書14ページの和訳を」

英語の先生にあてられた。隣のやつを睨んで立ち上がる。

「私は、この美しい男性に恋をした。寝ていても夢のなかにでてくるぐらい愛した。しかし……」

教科書すら、私を馬鹿にしている。
ざわめくクラスを無視してはあとため息をついた。

「水沢さんってフランス語もできるんだ……」

クラスの誰かがそう言った。

ん?と思ってよく見るとフランス語コラムと書いたページだった。

英語の先生は私に恥をかかせたかったのだろうか……。