「何冊でも?」

「ああ、好きなやつ買え」

私は値段を気にせずほしい漫画を手に取っていく。

ここ最近本屋に来ていなかったから、新刊が沢山あった。

「『男のお茶会』も新しいの出てる。そういえば、初めて和海にあったときユウキに似てるって思ったんだっけ」

「ゆうきって誰なんだ?」

和海が眉間にしわをよせて聞いてきた。

「この人。Sっ気があるが友達思いというギャップをもつ人気キャラ」

私が漫画の表紙を指して興奮ぎみに言うと和海はため息をついた。

「今度は二次元かよ…。ほんと笑えねぇ」

和海の嘆き(?)は有紀の耳には届かなかった。



「こんなに買ったのはいいが、帰るの大変だな」

「私が後先考えずに…」

和海にごめんと言った。

時間にして数時間。私はもうタメ口になれている。
私達の両手には漫画の入った袋がある。

「まあ、いいけど。そのかわり、もう他の男見るなよ」

「他の……。分かった」

私の禁断症状のことか。あれは、もはや不可抗力だ。

「ならいい。なあ」

「何?」

和海のあらたまった声にドクンと胸が打つ。
嫌な予感がする。

「再来週の土日って空いてるか?」

「バイトがなければ空いてるけど」

「その日旅行に行こう」

「旅行?」

「そう。で、そん時に告白の返事聞くから」

告白の返事…。
私、今まで忘れてた。

「その時までに決めて」

いつまでもこのままじゃいられない。
和海との同居に期限なんてなかったけど、思ってたよりも早かったなと思う。

「分かった。……真剣に考える」

私は自分の足を見ながら言った。

生ぬるい風が頬をかすめた。