これくらいしか知らない。

完全に行き詰まった。

「困ってるんだ」

和海がパソコンから顔を上げて私を見た。

「はい」

もう正直に言うしかない。

「全く分かりません」

「そっか、漫画なしだね」

痛いところをついてくる。

こうなればアプローチを変えるしかない。

私はスマホをカバンの中から取り出した。

和海だって男だ。

『男 されて嬉しいこと』

と、検索する。
『看病されたい』

今、和海は風邪ひいてない。

『手料理を振舞ってほしい』

ほぼ毎日作ってる。

『電車で肩にもたれかかってほしい』

今、電車の中じゃない。

『エプロン姿で「おかえりなさい」と言われたい』

エプロンなんてもってない。

『「大好き!」といいながら抱きついてほしい』

……ん。これはいけるか?

やめとこう。自分の気持ちがわからないのに言うのは和海に対して失礼だ。

あー、諦めそう。

なんか適当にやって当たらないかな?

適当になんか。

「まだ?」

和海が急かす。

そんなこと言われても分からないんだから仕方ない。

「ヒントあげようか」

「ほしいです」

「カレカノっぽいこと」

カレカノ?つまり恋人?

恋人はイチャイチャしてて、デートとかしてる男女のことだと私は認識している。

つまり…

「デートに行きましょう」

「……」

だんまりってひどくないですか。