「おい、逃げるなよ」

「ひっ」

教室から出ようとした男子達は情けない声を出して尻もちをついた。

「名前を言え」

人を従わせる王様の声。

こいつらにとっては閻魔様の声。

「お前ら退学だけではすませないからな」

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

「なんだ」

和海は呼び止めた男子を見ずに私の縄をハサミで切った。

「あの女のせいです!俺らはそいつらに言われてやっただけで」

和海の眉がピクリと動いた。

「そいつのクラスと名前」

「3-Aの羽山南海です」

「羽山……あいつか」

和海はハサミを机に置きながらぼそっと言った。

「有紀、歩けるか?」

和海がぎゅっと私の手を掴んだ。